朝夕の涼しさに、秋の気配を感じる今日この頃。
昨夜、春鹿寄席で「食欲の秋」の訪れを体感したのに続き、本日は一足早く「芸術の秋」に触れようと、京都国立近代美術館に「近代洋画の開拓者 高橋由一」展を観覧に行きました。
高橋由一は、幕末から明治にかけて活躍した、日本で最初の洋画家。
下野国佐野藩の剣術師範の家に生まれながら画業を志し、江戸幕府の蕃所調所に入局。そこでの活動に飽きたらず、自ら洋画の師を求めて横浜に居留していたワーグマンに師事。維新後は、自ら画塾を開き、洋画を広めるべく、展覧会を開催したり、日本初の美術雑誌を創刊。一方で、工部美術学校で教鞭を執っていたイタリア人画家フォンタネージに私淑。洋画の技術移入から普及まで、精力的に飽くなき追求を重ねた先駆者です。
展覧会は、代表作の「鮭」から「花魁」、風景画、静物画、肖像画、スケッチまで、高橋由一の画業が一覧出来るよう、くまなく展示されていました。どの作品も、洋画の黎明期らしい荒削りな面も見せながら、緻密な描写と徹底した写実が貫かれています。
油絵で数少ない重要文化財に指定されている「花魁」は、モデルになった小稲が「あちきはこんな顔でありません」と泣いたとか。 表面的な造形の美しさではなく、目鼻立ちの凹凸や骨格まで追求し、克明にくっきりと再現された画面は、鬼気迫るほどの気迫に満ちています。確かに、一見すると美人とは言い難くも、よくよく見ると端正な目鼻立ちの持ち主であることが、伺えます。
美術の教科書でお馴染みの「鮭」。むき出しの赤身の質感もさることながら、鱗の色つややざらざらの触感まで再現され、匂いまでむんとくるよう
。鮭の半身だけで、これだけの迫力とは、凄いことです。
他にも、「甲冑図」は表面を一面に飾る糸まで触れるかのよう。「芝浦夕景」などの風景画は、洋画ながらどこか日本画風の風土感が濃厚で、郷愁を誘われます。「山形市街図」は、木造の洋館が立ち並ぶ通りを俯瞰した、まさに「明治維新」という景観で、行ってみたくなります。近代日本黎明期の気風に触れられる、良い展覧会でした。
展覧会を見終えて外に出ると、平安神宮に通じる大通りに、どういう訳か赤い絨毯が敷かれ、人だかりが出来ています。行ってみると、「岡崎レッドカーペット」なる催し。
平安神宮の前の自動車道に、この土日限定で赤い絨毯を引き、1時間毎に時代祭の維新官軍や吹奏楽隊がパレード。空き時間は一般に開放し、自由に歩いてもらう趣向です。
我々が行った時は、ちょうど空き時間で一般公開中。絨毯の上には、なぜか1羽の白うさぎ
。皆の人気者になっています。それにしても何ゆえ?赤い絨毯には白い毛に赤い目のツートンカラーが映えるから?
赤絨毯通りの東側には、グルメゾーンが出来ていました。地鶏と松茸の親子丼を狙うも30分近い待ち時間に断念
祇園さゝ木の鱧天丼をチョイス。さくさくの柔らかな鱧に、ほんのり香ばしい松茸
いかにも京都らしい、逸品でした
食べ終えて、哲学の道でも散策しようとすると、雨が降り出しました
レッドカーペットの上では、ちょうど鳥羽高校の吹奏楽マーチングが始まりました。せっかくピッチもばっちりで上手な演奏なのに、楽器が濡れて、気の毒
我々も哲学の道散策は断念して、白川に沿って、小降りだし傘を差したままとりあえず三条まで歩くことに。祇園の近くまで来たところで、Takaが「お酒を買いに行きたいよの」とのたまいます。聞くと、お目当てのお店は、二条城の南の三条商店街とのこと。結構な距離ではと、びびりながら歩き始めると、途中、文化博物館や老舗らしい道具屋やら色々出てきて、飽きません。京の町歩きの面白さです。
烏丸のビジネス街を越えると、日常の生活空間。地元感たっぷりの三条商店街でお目当ての酒屋に寄り、今度は堀川通りを南下。本願寺に近づくと、辺りは仏具街。線香や法衣、数珠の修理専門店まであります。ここまで歩くと、京都駅はもうすぐ。1200年前、平安京が徒歩で歩ける距離に収まっていたことを考えると、意外にコンパクトな京都の中心部でした。
夜は、Taka姉宅で宴会
東北のお酒を飲みながら Taka姉夫妻の夏の終わりの東北旅行の話を伺いながら、我々も東北に行きたいな~と思わずにいられせん。
旅愁に誘われる秋の初めの酔い、もとい宵でした。
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