ターナー展と神戸異人館
昨週、猛威を奮った(?)pm2.5のせいで、アレルギー性の咽頭痛に襲われたElli。耳鼻科で薬を処方してもらい、ようやく治まってきました。そろそろ見頃を迎えつつある梅見にでも行きたいところですが、まだまだ歩き回る自信はありません。
そこで、ずっと気になっていた神戸のターナー展に出かけてみました。(て、それなりに歩くやろ?)
ターナーは、英国ロマン主義を代表する風景画家。その昔、ロンドンのテートで見た「雨・蒸気・速度」。疾走する蒸気機関車と、その周りに渦巻く大気のエネルギー。力学と自然が渾然一体となった「力のうねり」そのものが描き出されており、その迫力に「おお、産業革命!(ホンマか?)」と驚嘆したものです。
今回、その絵をぜひTakaにも・・・、と思ったのですが、残念ながら出品されていませんでした。が、いずれ劣らぬ大作が並んでおり、ターナーの作風を一望できました。
今回の発見は、比較的初期のパノラミックな構図と、晴れやかな色彩です。
特に、イタリアでの絵画修行の成果、「ヴァティカンから望むローマ:ラ・フォルリーナを伴って回廊装飾用の絵を準備するラファエロ」、「チャイルド・ハロルドの巡礼ーイタリア」の、奥行きのある、広々と俯瞰するような構図に、イタリアの明るい光に満ちた空の色彩。ジョージ4世の誕生日に献じられた「イングランド:リッチモンドヒル、プリンス・リージェント(摂政王太子)の誕生日に」の、テームズ川の湾曲した流れを見晴らす、緑豊かな田園風景も見事です。
ターナーは、上昇志向が強く、自ら絵を王室に献じたり、時の権力者の志向に合うように、題材を選んだり描き方を調整したりしたそうです。それでいて、表現者として、自らの思想の芯を曲げることはなく、歴史上有名な「トラファルガーの海戦」を絵にするよう依頼を受けた時は、大勝利の場面ではなく、座礁した船と、負傷し海に漂う人々という、戦争の悲壮さを描いています。
結果、王室から二度と発注が来なくなったとか・・・ 社会的に成功はしたいけど、譲れないところは譲らない、といったところでしょうか。何だか人間くさく、イギリス的な「歩きながら歩く」中庸志向(?)も思わせます。
美術館を出ると、4時。まだまだ明るいので、生田神社へ。
本殿裏の史跡「生田の森」には、残念ながら時間が遅くて入れませんでしたが、境内にある池のほとりには梅の花が咲いています。
そのまま坂を登って、北野の異人館街へ。5時前ですが、「風見鶏の館」は6時までということで、入ってみました。
元々は、ドイツ人貿易商の邸宅。瀟洒なとんがり屋根に、ドイツの伝統家屋を思わせるハーフティンバー(木組み)の壁。中に入ると、広々とした空間に高い天井。装飾的な壁紙に、ヨーロッパ的な間取りに、落ち着いた木の家具。空間も調度も、贅沢かつ豊かです。
係員の方から教えて頂いたのですが、一家の暮らしぶりも華やかで、食卓には毎週のように、伊勢エビが並んだとか。豊かな生活を送っていましたが、一人娘のエルゼさんの進学で、ドイツに帰国。在独中に第一次大戦で敵国となってしまったため、日本で築いた財産を全て失い、苦労を重ねられたそうです。
14才までこの地で過ごしたエルゼさんが、この館での暮らしを生涯、懐かしがっておられたのも、うなづけます。
ドイツの建築家の設計で、日本の宮大工が施工したため、洋魂和才(?)の風というか、どことなくこぢんまりと温かみのある和の雰囲気も入り、ほっと落ち着ける館でした。
暮れなずむ界隈を散策して、午後6時過ぎ、夕食を予約していたお店へ。
この日の前日は、実はElliの誕生日。Takaが選んでくれた「和黒」というお店で、神戸牛のステーキ。
目の前で焼いてくれる鮑に、とろけるようなお肉。
その旨みをたっぷり吸った野菜。料理人の方の熟練の手さばきにも、見とれてしまいます。贅沢な一時に、感謝
お店を出て、甘い物など欲しくなったので、鳴門鯛焼本舗(徳島出身者には気になる名前)で鳴門金時と小豆の鯛焼きなど調達し、帰路につきました。午後からでしたが、神戸のハイカラ情緒を楽しめた一時でした。
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