2014年3月 9日 (日)

ターナー展と神戸異人館

 昨週、猛威を奮った(?)pm2.5のせいで、アレルギー性の咽頭痛に襲われたElli。耳鼻科で薬を処方してもらい、ようやく治まってきました。そろそろ見頃を迎えつつある梅見にでも行きたいところですが、まだまだ歩き回る自信はありません。

 そこで、ずっと気になっていた神戸のターナー展に出かけてみました。(て、それなりに歩くやろ?)

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 ターナーは、英国ロマン主義を代表する風景画家。その昔、ロンドンのテートで見た「雨・蒸気・速度」。疾走する蒸気機関車と、その周りに渦巻く大気のエネルギー。力学と自然が渾然一体となった「力のうねり」そのものが描き出されており、その迫力に「おお、産業革命!(ホンマか?)」と驚嘆したものです。

 今回、その絵をぜひTakaにも・・・、と思ったのですが、残念ながら出品されていませんでした。が、いずれ劣らぬ大作が並んでおり、ターナーの作風を一望できました。

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 今回の発見は、比較的初期のパノラミックな構図と、晴れやかな色彩です。

 特に、イタリアでの絵画修行の成果、「ヴァティカンから望むローマ:ラ・フォルリーナを伴って回廊装飾用の絵を準備するラファエロ」、「チャイルド・ハロルドの巡礼ーイタリア」の、奥行きのある、広々と俯瞰するような構図に、イタリアの明るい光に満ちた空の色彩。ジョージ4世の誕生日に献じられた「イングランド:リッチモンドヒル、プリンス・リージェント(摂政王太子)の誕生日に」の、テームズ川の湾曲した流れを見晴らす、緑豊かな田園風景も見事です。

 ターナーは、上昇志向が強く、自ら絵を王室に献じたり、時の権力者の志向に合うように、題材を選んだり描き方を調整したりしたそうです。それでいて、表現者として、自らの思想の芯を曲げることはなく、歴史上有名な「トラファルガーの海戦」を絵にするよう依頼を受けた時は、大勝利の場面ではなく、座礁した船と、負傷し海に漂う人々という、戦争の悲壮さを描いています。

 結果、王室から二度と発注が来なくなったとか・・・ 社会的に成功はしたいけど、譲れないところは譲らない、といったところでしょうか。何だか人間くさく、イギリス的な「歩きながら歩く」中庸志向(?)も思わせます。

 美術館を出ると、4時。まだまだ明るいので、生田神社へ。

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 本殿裏の史跡「生田の森」には、残念ながら時間が遅くて入れませんでしたが、境内にある池のほとりには梅の花が咲いています。

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 そのまま坂を登って、北野の異人館街へ。5時前ですが、「風見鶏の館」は6時までということで、入ってみました。

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 元々は、ドイツ人貿易商の邸宅。瀟洒なとんがり屋根に、ドイツの伝統家屋を思わせるハーフティンバー(木組み)の壁。中に入ると、広々とした空間に高い天井。装飾的な壁紙に、ヨーロッパ的な間取りに、落ち着いた木の家具。空間も調度も、贅沢かつ豊かです。

 係員の方から教えて頂いたのですが、一家の暮らしぶりも華やかで、食卓には毎週のように、伊勢エビが並んだとか。豊かな生活を送っていましたが、一人娘のエルゼさんの進学で、ドイツに帰国。在独中に第一次大戦で敵国となってしまったため、日本で築いた財産を全て失い、苦労を重ねられたそうです。

 14才までこの地で過ごしたエルゼさんが、この館での暮らしを生涯、懐かしがっておられたのも、うなづけます。

 ドイツの建築家の設計で、日本の宮大工が施工したため、洋魂和才(?)の風というか、どことなくこぢんまりと温かみのある和の雰囲気も入り、ほっと落ち着ける館でした。

20140309_turner_06暮れなずむ界隈を散策して、午後6時過ぎ、夕食を予約していたお店へ。

 この日の前日は、実はElliの誕生日。Takaが選んでくれた「和黒」というお店で、神戸牛のステーキ。

 目の前で焼いてくれる鮑に、とろけるようなお肉。

 その旨みをたっぷり吸った野菜。料理人の方の熟練の手さばきにも、見とれてしまいます。贅沢な一時に、感謝

 

 お店を出て、甘い物など欲しくなったので、鳴門鯛焼本舗(徳島出身者には気になる名前)で鳴門金時と小豆の鯛焼きなど調達し、帰路につきました。午後からでしたが、神戸のハイカラ情緒を楽しめた一時でした。

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2014年1月 5日 (日)

繁昌亭で初笑いして皇室名品しっとり鑑賞

長かったお正月休みも今日で終わり・・・ ショボーン

このまま家に居ると、明日からのこと(もちろん、Jobね)ばかり頭に浮かんできて鬱々としそうなので、ここは一発、落語で初笑いと洒落込みました。

そこで出掛けましたよ繁昌亭。

おっとその前に、繁昌亭と言えば、大阪天満宮より敷地を借りて運営している所。まずは、地主様でもある天満宮様に初詣。

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 今年に入って三社目です。 なぜか、神にすがりたい Takaがそこに居ました。


20140105_hanjyotei_02 しかし、さすがに受験シーズン到来間近の天満宮です。朝早くから、中学生、高校生とおぼしき若人達が、わんさかとやってきておられます。

 Takaのように夢も希望もない、おやじとは違うのですから、是非、神様の力など借りずに自らの力だけで乗り越えていただきたいものです。 そして、その分、神のご加護をこちらに回して下さい。

 合格祈願の絵馬もびっしり。 あぁ~ 懐かしいなぁ(ってか、お前も神様の力を当てにしとったんかいってな感じですが)

 左の写真は、登龍門にあった灯籠です。

 龍がかけあがっていく姿が彫り込まれていました。やはり天満宮、どこまでも、お勉強仕様ですね。

 今日はいい天気、天満宮の梅の花も少しずつ蕾みが膨らんできています。

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 さて、そろそろ繁昌亭開場のお時間です。

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 今日の演目は、

   笑福亭生寿さん    つる

   旭堂小二三さん    寛永三馬術 曲垣平九郎 愛宕山梅花の誉れ    

   笑福亭純瓶さん    犬の目

   笑福亭べ瓶さん    ねずみ

 でした。 動物ネタで統一されていました。  正月早々笑わせていただきました。

 ちょうどお昼時、いつもは天神橋筋商店街の「ゆかり」でお好み焼きを食するのですが、異様に人が多くて、お店も順番待ち状態。。。 とほほ。

 お手軽なところで「はなまるうどん」を食してこのあと京都に。 京都国立近代美術館で開かれている

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 を観るためです。 会期も迫っており、この日しかチャンスがなかったのです。 正確に言うと1月13日まで会期があるのですが、会期終了間際の展覧会では恐ろしい経験をしたこともあるため、人混み大嫌いの Taka的には、会期一週間前がリミットなのです。

 しかし、流石に皇室のお持ちの品々は Takaのような庶民のお持ち物とは訳が違います。 人形一つにしても製作期間3年(お、お、お幾ら)とか、そんなお品がごろごろとございました。  パンフレットの絵は上村松園の描いた清少納言、三部作の一つだそうですが、その三部作を制作するのに20年を要したそうです。

 展覧会を見終わった頃には、日も西に傾き、美術館のロビーからはこんな景色が。

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 平安神宮の鳥居が夕陽に照らされて神々しい姿を見せています。


                     行かねば


夕闇迫る平安神宮に。

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 これで、今年の初詣、四社目となりました。

 いい年になるといいなぁ~~~~。

 三条のイスタンブール・サライでトルコ料理を食して京都駅に戻ると、音楽に合わせて水が軽やかに踊っていました。

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 これで、長かった九連休も終わりました。 明日からはどんな日になるのでしょうか。

 ハラハラ、ドキドキ


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2013年7月 6日 (土)

落語アウトレットとクラーク・コレクション

 酒と笑いに満ちた春鹿寄席から1週間、またまた落語に行ってきました。

 題して、「落語アウトレット」

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 先の春鹿寄席で演者の笑福亭純瓶さんが盛んに宣伝しておられ、それもそのはず、7月の春鹿寄席の噺家さん3名全員が、こちらも出演されるというのです。

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 一週間を置かずして、同じ噺家さんの高座から、どんな噺が聴けるのか 繁昌亭の朝席ということで席料も1500円と、まさになけなしのアウトレット価格。お得さと好奇心につられて、早くも猛暑の予感漂う大阪のど真ん中まで繰り出しました。

 お題は、桂福丸さん「餅屋問答」。餅屋の主が、ぶらぶらといい加減に暮らしている若者を、無住職になったお寺の「にわか住職」に付けますが、そこに旅の雲水が現れて、禅問答を仕掛けてきます。困り果てたにわか住職は、その場に居合わせた餅屋に・・・
福丸さんの知性ある落ち着いた語り口は、僧侶や医者、店主と言った役柄によく合い、引き締まります。安定した笑いをもたらしてくれます。

 林家そめすけさん「青菜」。我々が聴きに行く寄席で、出現率がとても高い「青菜」。大筋は同じでも、細かく笑いを取る小ネタが、噺家さんの持ち味に合わせてアレンジされます。元々、漫才師をされていたそうで、軽妙な早口で、賑やかに笑わせてくれます。ちょっとモダンな青菜でした。

 桂三歩さん「熱愛家族」。三歩さんといえば、何と言っても文枝師匠作の創作落語。休みの日に、お父さんが自分の家族は何をしているのか尋ねると、皆それぞれに芸能人のおっかけ。呆れ返るお父さん、かくいうご本人も・・・ やはり三歩さんのほのぼの飄々とした語りは、ちょっと人をくったような現代物の創作には抜群です。今日もたっぷり笑わせていただきました。

 笑福亭純瓶さん 「代書屋」。4月の春鹿寄席と同じネタ。でも、何回聞いても面白い~。昔懐かしい街とそこに生きる人の姿が、面白おかしく蘇ってくるような噺。安定の語り口で、安心して笑いの世界に誘われます。

  落語アウトレット、1500円で心ゆくまで笑えて、本当にお得でした

 繁昌亭の後は、天神橋商店街「ゆかり」のお好み焼き。

 昼食後は、一路、神戸(の手前?)へ。雰囲気をがらりと変えて、兵庫県立美術館「奇跡のクラーク・コレクション ルノワールとフランス絵画の傑作」を鑑賞

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 ここ数年はオランダやイタリアの近世までの絵画や、日本美術を見ることが多く、印象派は久しぶり。ドガやルノわワールの人物画が充実しています。特に今回のルノワールは、「劇場の桟敷席(音楽会)」「うちわを持つ少女」など、華やかな気品と存在感のあるものが多く、収集したクラーク夫妻の鑑賞眼が伺えます

 今回の展覧会、兵庫県立美術館を設計した安藤忠雄氏が、ボストンのクラーク美術館の改修を手掛けるという縁で、実現したそうです。安藤さんの建築は、デザインは面白いのですが、デザインとコンセプト重視のあまり、動線が・・・(以下略)私たちが気にするところのものではありませんが、本当にそれでいいのでしょうか

夕方は雑用のため再び大阪に戻り、京野菜の接方来で夕食。Takaの誕生日を少し早めに祝って、盛りだくさんな1日の締めとなったのでした。

2013年6月13日 (木)

ボストン美術館展とアベノハルカス

 本日、日本一の高層ビル、アベノハルカス、オープンの日。

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 正確にいうと、日本一の売り場面積を誇る近鉄百貨店の新装開店日。

 なのに、報道ときたら、東京スカイツリーの進捗は逐一報じていたというのに、大阪のアベノハルカスは無視しています。この首都圏偏重ぶりにムカッときたElli、普段はあまりこの手のイベントには無関心な方なのですが、今度ばかりはアベノハルカスオープンをお祝いすべく、阿倍野に出向くことにしました•••


 て、本当は、開期末が迫ったボストン美術館展を観に行こうと友人と連絡を取ったら、この日が都合よかっただけです

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 友人の方も私も阿部野は不案内。分かりやすい待ち合わせ場所をインターネットで調べると、「中央改札を出てすぐの所で、天井を舞っている飛天像」が分かりやすい、とあります。アベノハルカス開業もあり、混雑必至の駅で上さえ見上げればよいとは、不慣れな場所でも絶対に大丈夫そう

 万全の準備で、いざ当日。時間より早く天王寺に着き、改札を出て天井に飛天を探すと・・・ 見当たりません。

 困って駅員さんに尋ねると、「ああ、何年も前に撤去しましたよ。今は、ほら。」と指差す先をみると、改札口の端っこに、天井からぶら下がる何やら大きな布包み・・・飛天は、何と白い布でお姿を隠され、隅に追いやられていたのでした。「完全に撤去してないなら、今から布を取って、お姿を見せて下さいよ〜」と、今さら駅員に言っても仕方がないので、ひたすら改札を出てくる人に目を凝らし、無事に友人と合流。

 まずは昼ご飯をと、折角だしアベノハルカスの方に行ってみると、道路に入館待ちの行列・・・

 そそくさと退散して、JR側のMIOで、Brasserie Boo Jr.という店に入りました。メインがビーフストロガノフで重めかと思ったら、創作料理風の洒落た味付け。自然素材を生かした、ワインバーだからでしょうか。美味しかったです

 今日の主目的、大阪市立美術館は天王寺公園の中にあります。天王寺公園と言えば、一昔前までは、鬱蒼と木が茂り池の周りの道には、雑多な露天に、昼間からカラオケの音・・・と、大阪のコテコテそのもののような所でしたが、何年か前から美しく生まれ変わり、噴水にバラ園など、洗練された文化空間を演出しています。しかしよく見ると・・・

  花に彩られた張りぼての動物、向こうから覗く作り物の大阪城天守、さらに奥には通天閣。

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  ・・・ やはり、ディープな大阪でした

 終了直前のボストン美術館展。日本美術の傑作揃いとの評判が高いので、さぞや込んでいるかと思いきや、意外や意外、待ち時間なしで入館できます。

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 しかし、中に入ると・・・微妙にごった返しており、きちんと見たければ、ベルトコンベア状態でゆっくり流れていく最前列に身を置かねばなりません・・・他の美術館なら、入館待ち時間を設けて、中の人数を抑えるギリギリのラインかも 待たされてイライラするくらいなら、雑踏の活気(?)に身を置く、これも大阪流・・・

 美術展の内容は圧倒的で、通常の展覧会なら目玉になるような高水準の作品が、始めから終わりまで並んでいます。奈良時代の曼荼羅に始まって、平安、鎌倉の迫真の仏教美術、優美な御仏から凜と引き締まった菩薩・・・ 平治物語絵巻で観覧者の列がなかなか進まずヘトヘトになり、以降、その疲れをひきずったまま作品を見ることになってしまいましたが、続く室町期の山水図、安土桃山から江戸期にかけての狩野派、土佐派などの作品群も当たり前のように素晴らしく、傑作の持つ力に思わず目を見開いてしまいます。

 ポスターになっている曽我蕭白の、圧巻の雲龍図もさることながら、個人的に印象に残ったのは、江戸期の花鳥画で、細部まで緻密に、鮮やかな色彩で描かれたもの。中でも、狩野義信の「仙境・蕭史・弄玉図」は、中央の人物から背景の山水まで明細に、美しい色彩で描き込まれた繊細な細密画。伊藤若冲の「鸚鵡図」の、白銀に煌めく羽と、天平の御物のような朱色の止まり木の、鮮明でモダンな対比。

 もっとも、江戸期は、現代に時代も感覚もより近い上、色彩も良く残っているので、なおさら鮮烈に感じるのかもしれません。

 それにしても、こんなに凄い作品群を、何ゆえ海外に流出させてしまったのでしょうか・・・維新後の欧化政策は必然だったとはいえ、明治薩長政権のアホ~と、心で叫んでしまうのでした。

 1時30分に入って5時の閉館まで、たっぷり3時間半、休憩なしの美術鑑賞。さすがに疲れて、早めの夕食を取ることに。ダメ元でアベノハルカスに行くと、入り口の行列もなく、空いてます。中華の四川餐館に入ってみました。麻婆豆腐のセットは、酢豚や点心、杏仁豆腐も付いて、とってもお得 品の良い味もさることながら、店員さんの丁寧で行き届いた接客に目を見張ります。近鉄がアベノハルカスに掛ける、並々ならぬ意欲を、目の当たりにしました。

名品の洪水での疲れもすっかり癒え、思いがけず大阪ミナミの最新の姿も見ることができ、充実した一日でした。

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2013年4月23日 (火)

「当麻寺」展と春の奈良散歩

20130423_nara_01 Elliが御奉公を解かれ、3週間。

 はじめの2週間は健康状態が優れない両親を見舞いに徳島に行っていましたが、先週から色々と用があるため、しばらくはこちらに落ち着いていることに。御奉公中はなかなか出来なかった、「平日のお出かけ」。

 本日、学生時代からの友達と、奈良国立博物館で開催中の特別展「當麻寺 -極楽浄土へのあこがれ-」に出かけることになりました。

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 6月2日まで開催されていますが、中将姫伝説ゆかりの「国宝 當麻曼荼羅」が展示されるのは、今日から五月の連休明けのみ。二上山の麓の當麻寺、一昨年の「酒蔵見てある記」のあと立ち寄ったり、この冬には石光寺で中将姫が當麻曼荼羅を染めたという井戸を見たり、また、中将姫伝説を下敷きにした折口信夫『死者の書』と読んだりしたので、ぜひとも當麻曼荼羅の実物を見てみたくなったのです。

 渋い題材なので、きっと空いてるだろうと思いきや、大和路有数の名刹である當麻寺、わりと人が来ております。仏教美術の学識豊な同行の友達アドバイスで、混雑を避けるために、展覧会随一の名品「 国宝 綴織當麻曼荼羅」に直行。幸い人は殆どおらず、當麻曼荼羅の図柄構成を子細に紹介しているDVDを事前に観てから、ゆったりと観ることができました。

  「當麻曼荼羅」は、「観無量寿経」の教えを説いた物で、マガタ国王妃が、夫と自分を幽閉する王子の所行を嘆き、釈迦に教えを請うたところ、阿弥陀如来の座す浄土を説く、という筋立てになっています。伝説では、中将姫が蓮糸から織り上げたことになっていますが、実際は絹糸で、唐から伝来と推定。763年の記録があるように1250年近くを経ているため、傷みが激しく、実際、近づいても殆どの図柄が判別できません。同行の友達が教えてくれたところによると、辛うじて線が分かる部分は、後世の補修が入っている箇所とか。 

 図柄を鑑賞するなら、1502年完成の「文亀本」の展示期間の方がよいかもしれませんが、 原本に触れられるのは大変、貴重 国宝の當麻曼荼羅厨子も、漆に蒔絵で蓮の花が一面に扉が描かれ、見事。

 當麻曼荼羅といえば、中将姫伝説。中将姫の像や、當麻寺の起こりと中将姫伝説を描いた「當麻寺縁起」で、概ねを理解できます。當麻寺をはじめ、石光寺と中将姫の関わりも、よく分かります。また、「當麻曼荼羅」を始めとする浄土信仰の展開を紹介した展示では、浄土宗の開祖「一遍上人絵巻」もあり、とても充実していました。

 博物館を出ると、お昼前。友達の案内で、高畑にある「ギャラリー喫茶高畑」に行ってみました。途中、飛火野を抜けます。もう藤が咲いています。

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 「ギャラリー喫茶高畑」は、志賀直哉旧居近くの閑静な一画にあります。ランチの自家製カレーは、スパイスを良く効かせた中に甘みもあり、何というか、お洒落な辛さ。木彫の店内が心地よく、ついついお喋りでくつろいでしまいます。

 喫茶店のある建物は、奈良には珍しいコンドミニアム形式の宿になっていて、中を見せて頂きました。寝室と別にリビング空間やキッチンもあり、家族連れに良さそうな、ゆったりした造り。窓からは志賀直哉旧居や、春日山も見渡せます。奈良は近場のため、泊まる機会のないElli。遠方から来る人が、ちょっと羨ましくなる一瞬でした。

 時刻は、2時半。春日大社に通じる、ささやきの小径を通ってみました。馬酔木が、白い花を鈴なりに付けています。

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 馬酔木、家の周りでは桜よりも早く咲くので、この時期に満開とは、驚きました。

  飛火野、浅茅野から浮見堂と歩くと、藤棚に紫や白の藤が揺れています。

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 まだ5分咲きくらい。これから少しずつ花が開き、房も伸びていくのでしょう。荒池園地に出ると、奈良の八重桜が咲き誇っています。

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 この春、最後に見る桜。春から初夏へと移り変わる花模様。午前の「當麻寺展」から午後の奈良公園花散歩まで、奈良の時の移ろいに浸った1日でした。


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2012年11月11日 (日)

ベルリンに行った話~実は、太宰府

 福岡に美術展を訪ねる旅の2日目。いよいよこの旅の最大の目的、ベルリンから来たフェルメールと対面です。

 会場は、太宰府の九州国立博物館。西鉄で、太宰府散策きっぷを購入し、いざ、出発です。

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 西鉄・・・  普通電車なのに外観が、やけにゴージャスですぅ。


 今日は、あいにくの曇り空。時折、小雨がパラつきます。 太宰府駅から、まだ静かな天満宮門前町を抜け、歩くこと10分で国立博物館に到着。2005年開館の、国内で一番新しい国立博物館です。

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 勾配を生かした、公園のように緑豊かな道を登っていくと、大きなガラス張りの建物が、姿を現します。

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 開場前でも、すでに行列。やはりフェルメールの人気は高い

 エントランスホールに入ると、中央階段脇の博多祇園山笠の飾り山が、賑やかな姿で出迎えてくれます。

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 今回の特別展『ベルリン国立美術館展』。その名の通り、ベルリン国立美術館所蔵の107作品が展示されています。

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 イタリアやフランスの作品だけでなく、彫刻のリーメンシュナイダーや、絵画のクラハッハなど、ドイツ美術を代表する作家の名品も。

 クラナッハ作『ルクレティア』。固いまでに鋭い人物造形に、緊迫した精神がみなぎります。世界史の教科書に登場するルターの厳格な肖像画も、クラナッハの作品。実物を見られたのは、貴重な体験

 我々をここまで呼び寄せた、フェルメールの『真珠の首飾りの少女』。壁面にあふれる白い光の中、柔らかな黄色のドレスをまとった少女が、穏やかな横顔で首飾りを手に、光の降り注ぐ窓の方へと眼差しを向けています。たおやかで、優美な一枚。フェルメールの作品の中でも和やかで、親しみやすい美しさを湛えています。

 特別展の次は、常設展。古代から大陸と日本列島の窓口だった九州の歴史と文化を紹介しています。市立博物館より、もう一つ分かりやすい展示。印象に残った文物を2,3記すと、室町時代、筑前で造られ、珍重されていた茶道具の芦屋釜。「楓流水 鶏 図真形釜」は、いぶし銀のように渋い一品。  近世ヨーロッパの優美な聖母子像を、日本の豪華な蒔絵で飾った「花鳥蒔絵螺鈿聖龕」。南蛮交易の華やかさを伝えています。古事記完成1300年記念ということで、本居宣長自筆『古事記伝』もあり、常設だけでも充実していました。

 博物館を出ると、1時過ぎ。「虹のトンネル」という専用通路で太宰府天満宮へ出て、境内を通り抜け、参道へ。

20121111_dazaifu_06 太宰府散策切符には喫茶券が付いていて、「茶房・民芸 かさの家」で、梅ヶ枝餅と抹茶のセットを食べることができます。

 民芸風の調度に囲まれた小部屋で、心安まります


 小腹を満たして、太宰府天満宮に参詣。七五三参りの家族の姿も。太宰府といえば梅ですが、この季節、「菊花展」が開かれ、手塩にかけた立派な菊が幾列も並んでいます。

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 それでは、太宰府の境内をご紹介します。


20121111_dazaifu_08_2           天満宮と言えばお牛様。参拝客に頭をなでられすぎて光っています。    

20121111_dazaifu_09                         立派な社殿

20121111_dazaifu_10                      これが、かの 飛梅 です


20121111_dazaifu_11 境内を一巡して、またもや小腹が空いたので、本殿奥の北神園へ。

 色づきの進んだ紅葉を愛でながら、一番奥まった所にある「お石茶屋」へ。白い皮の、芳ばしく、もちもち柔らかな食感に、ほどよい甘さの餡。あまりの美味しさに持ち帰りを頼みましたが、この焼きたての味は、きっと店内でしか味わえないのでしょう。

 この秋の紅葉は駆け足なのか、太宰府天満宮の楓も、もうかなり色付いています。朝、九州国博への途中にあった紅葉の名称、光明禅寺へ行って見ました。端正な石庭の、白い石と明るい緑の苔の対比の上を、緑から橙、朱まで七色の紅葉が覆っています。飽かずに眺め入ります。

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 折り悪く、時雨が降ってきました。雨に濡れ、鮮やかさを増す苔と紅葉の色。ついつい見入ってしまいますが、今日のうちに関西まで帰る身。濡れそぼる紅葉寺を後にし、太宰府を立ちました。

 福岡に戻ると、Takaが酒屋に行きたいと言い出します。何でも、この辺りの有名な地酒を買いたいのだそう。天神からとぼとぼ歩くこと15分、お目当ての店に着いたものの、対応も品揃えも今一つで、空振り。そのまま歩いて、博多駅に。途中、静かなビル街の中に、鎮守の杜のこんもりした緑と鳥居が、忽然と現れます。住吉神社。1800年の歴史を誇り、日本各地にある住吉神社の中でも最も古く、本殿は国の重文。小ぢんまりしながらも、閑かな緑の中、美しい佇まい

 福岡の街を歩くと、小規模ながら、このような由緒ある神社に行き当たります。歴史の蓄積を感じさます。

 博多駅の地下で、夕食に鶏弁当(大分名産ですが)を買って、新幹線に乗り込みました。福岡の文化と歴史と食に恐れ入った2日間でした

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2012年11月10日 (土)

エジプトに行った話~実は、福岡

 文化の日が、期せずして仕事と食の日になった先週。今週こそ文化的に過ごそうと、美術館に出かけることにしました。「芸術の秋」は、日本各地で美術展がたけなわ。なかでも、フェルメールの展覧会は、ぜひとも観たいところ。

 この秋は、神戸と福岡にフェルメールの絵が来ています。このうち福岡に来ている作品は、東京と九州だけでヨーロッパはベルリンに戻ってゆきます。東京も福岡も遠いけど、ベルリンはさらに遥か・・・ ここは一念発起、福岡まで観に行くことにしました。

 ついでに九州周遊旅行でも出来れば理想ですが、先月東北と信州に1週間を費やした我々。時間も資力も倹約モード 土日だけで、どうやって行こうかと新幹線やらピーチアビエーションやら検討していると、Takaが「飛行機は嫌っ 新幹線も早割はもう発売期限過ぎてるし、宿も入れるとお高いし。高速日帰り、これより経済的なものはない」とのたまいます・・・いくら助手席で寝ている、もとい座っているだけのElliも、さすがにこれは全力で避けたい 

 全力でネットを徘徊すると、新幹線と宿のセットで、2万弱で収まるプランを発見。Takaに見せると、やはり運転片道5時間もの日帰りは負担だったのでしょう。即、予約を入れました。

 そして、当日。新大阪駅に行くと、九州新幹線の「さくら」が停まっています。ネットで見た、九州新幹線開通の幻のCMが頭に浮かんできます。いつか、乗りたいな~。我々は、8時21分発ののぞみで出発。これまで車で何時間もかけて、大阪から中国地方を越えて九州まで辿り着いていた道のりが、2時間でなんだかあっという間。あっけなく、しかし快適に博多駅に到着です。

 駅を出て、中洲のホテルに荷物を預け、そのまま福岡見物を兼ねて、昼食にと調べていたラーメン屋まで歩きます。途中、川沿いの天神中央公園や、天神の繁華街を抜けます。公園には旧中央公会堂貴賓館という洋館があったり、アクロス福岡という、階段上になった壁面が一面に緑化された会議場やホールの入ったビルがあったり、文化的かつ先進的。天神周辺は、垢抜けたデパートや高級ブランド専門店の入ったアーケードが連なり、とっても華やか。天神から警固という地区に出ると、これまた大きな道にお洒落なブティックやレストランが続いています。なんか、大阪よりお洒落?

 お目当てのお店、秀ちゃんラーメンに着くと、私たちの次で満席になり、ギリギリセーフラーメンは、豚骨の旨味たっぷりなのに、口当たりはすっきり、細い麺は腰(?)があるのに、すべすべ滑らか。ラーメンとは、かくも洗練された食べ物だったのでしょうか。餃子も香ばしく美味 福岡の食のレベルを思い知りました.

 欅並木が色付き始めた、文字通り「欅通り」を歩き、福岡城跡へ。一帯は、大濠公園として整備され、日本庭園や福岡市立美術館があります。緑豊かな公園をゆっくり散歩するのもいいですが、曇りがちのお天気。 それなら、今回の旅のテーマ、芸術の秋を極めようと、福岡市立美術館で開催中の「大英博物館 古代エジプト展」(芸術と言うより、歴史)を見聞することにしました。

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 大英博物館が誇るエジプト関連の戦利品、もとい収蔵品から、世界最長の37mにも及ぶ「グリーンフィールド・パピルス」をはじめ、古代エジプトの死生観を表した「死者の書」の他、棺、ミイラ、護符、装身具などの副葬品が来日し、古代エジプトの死後の世界が一通り理解できるようになっています。

 中心となるパピルスの絵巻「死者の書」は、亡くなった人が死後の世界に入り、数々の難所と関門を乗り越え、無事天国へ辿り着くまでの指南書。襲いくるワニや蛇を追い払う呪文や、神の館で受ける最後の審判の手順などが書かれています。

 人面に鳥の体をした死者の魂や、鳥や動物の頭をした神様も楽しいですが、何より面白いのは、「罪の否定告白」を、それを乗り切るための呪文。最後の審判で死者は神々の前で、罪の告白ならぬ、「罪の否定告白」をします。生前に犯してはならない罪が42種類あり、その全てを犯していないことを神の前で告げます。

 曰く、「盗みをしなかったこと」(買い置きしたお菓子の盗み食いもだめ?)「人をだまさなかったこと」(嘘も方便は通用しない?)「悪口を言わなかったこと」(姑などの・・・以下略)」 ここで嘘の告白をしても、心臓を天秤にかけられ、正義の女神の羽根と釣り合わなければ悪事を働いていた証拠となり、アメミトなる怪物に心臓を食べられ、真の終幕となります。う~む、Elliなぞ、かる~く心臓を怪物に食べられて終わりそう

 こんな告白を考えるとは、古代エジプト人はさぞや品行方正、清廉の士と思いきや、続きの展示をみて、仰天 なんと、天秤での心臓計量で心臓が自分を裏切り、不利に働くのを防ぐための呪文があるのです。なんとも人間くさいというか、お茶目というか、人は古今東西皆同じというか。思わずほっとして(?)てしまいます。

 最後の審判をめでたく乗り越え、「イアルの野」の楽園に辿り着いた死者は、農耕に励み、日々を送ります。晴耕雨読 健全で、いいじゃないですか~、と思いきや、古代エジプトの民は、ここでも現世的人間らしさ全開。王様をはじめ、裕福な人は「シャブティ」なる召使いの人形をこしらえて墓に入れ、来世へとお供させ、イアルの野での畑仕事をこれに任せるのでありました・・・ う~む

 人は、時代と場所が変わっても同じ。はるか時空の彼方の人々に、大いに親しみを持てる、愉快な展覧会でした。

 最後にミイラの棺に入ってパチリ  これで、来世は悠々自適?

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20121110_fukuoka_03 美術館を出て、公園の真ん中に広々と横たわる大濠池をしばし散策。

 池にかかる橋を歩いて、公園の北側へ。「死者の書」が呼び寄せるのか、曇天のせいか、なぜか烏がいっぱい 時刻は、4時前。暗くなるまでまだ時間があるので、福岡市立博物館に行ってみることにしました。

 地下鉄もありますが、せっかくなので町の様子の分かるバスに乗ってみます。福岡シティループバスという、観光名所を網羅した緑色のバス。車内では沿線の紹介放送が流れ、よく分かります。

 市立博物館も、ガラス張りの立派な作り。

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 ここには、「漢倭奴国王」の金印があります。常設展では、古代から現代まで大陸への玄関として栄えた福岡の反映と歴史を語る品が、押し合いへし合いのように並んでいます。閉館まで1時間足らずで、じっくり見られないのが残念。

 所狭しと押し込められた史料と考古遺物のなかで、国宝の金印は専用のガラスケースに一つだけ、大切に展示されていました。それは、思ったよりずっと小さく、長さ一辺2.3cmほど。TakaもElliも教科書の写真で、勝手に4~5cmくらいのものを想像していたので、なおのことしげしげと見入ってしまいます。小さくも、波濤と時間を越えて伝わった金の印は、その威光を語るがごとく重厚な輝きでした。

20121110_fukuoka_05 ホテルに戻り温泉に入ってから、夜は中洲から川を渡ってすぐの天神中央公園脇のめんたい重へ。

 丁寧に、品良く造られた郷土料理はどれも美味。 お昼のラーメンに続いて、福岡の食の水準の高さを実感。店を出て、中洲を少し散策。川沿いに、名物の屋台が並んでいます。小雨でも、威勢の良い呼び声にどこもお客さんでいっぱい。屋台から庶民的なお店、お洒落な高級店まで、この競合が福岡の美食を生むのですね。恐れ入りました。

 食も文化も町の作りも、水準の福岡。その都市力に圧倒された、旅の初日でした。

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           めんたい重で食した、その名も「明太重」 おいしゅうございました。

 

2012年9月23日 (日)

荒巻鮭と白兎~高橋由一展と岡崎レッドカーペット

20120923_takahashi_02_2 朝夕の涼しさに、秋の気配を感じる今日この頃。

 昨夜、春鹿寄席で「食欲の秋」の訪れを体感したのに続き、本日は一足早く「芸術の秋」に触れようと、京都国立近代美術館に「近代洋画の開拓者 高橋由一」展を観覧に行きました。

 高橋由一は、幕末から明治にかけて活躍した、日本で最初の洋画家。

 下野国佐野藩の剣術師範の家に生まれながら画業を志し、江戸幕府の蕃所調所に入局。そこでの活動に飽きたらず、自ら洋画の師を求めて横浜に居留していたワーグマンに師事。維新後は、自ら画塾を開き、洋画を広めるべく、展覧会を開催したり、日本初の美術雑誌を創刊。一方で、工部美術学校で教鞭を執っていたイタリア人画家フォンタネージに私淑。洋画の技術移入から普及まで、精力的に飽くなき追求を重ねた先駆者です。

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 展覧会は、代表作の「鮭」から「花魁」、風景画、静物画、肖像画、スケッチまで、高橋由一の画業が一覧出来るよう、くまなく展示されていました。どの作品も、洋画の黎明期らしい荒削りな面も見せながら、緻密な描写と徹底した写実が貫かれています。

 油絵で数少ない重要文化財に指定されている「花魁」は、モデルになった小稲が「あちきはこんな顔でありません」と泣いたとか。 表面的な造形の美しさではなく、目鼻立ちの凹凸や骨格まで追求し、克明にくっきりと再現された画面は、鬼気迫るほどの気迫に満ちています。確かに、一見すると美人とは言い難くも、よくよく見ると端正な目鼻立ちの持ち主であることが、伺えます。

 美術の教科書でお馴染みの「鮭」。むき出しの赤身の質感もさることながら、鱗の色つややざらざらの触感まで再現され、匂いまでむんとくるよう。鮭の半身だけで、これだけの迫力とは、凄いことです。

 他にも、「甲冑図」は表面を一面に飾る糸まで触れるかのよう。「芝浦夕景」などの風景画は、洋画ながらどこか日本画風の風土感が濃厚で、郷愁を誘われます。「山形市街図」は、木造の洋館が立ち並ぶ通りを俯瞰した、まさに「明治維新」という景観で、行ってみたくなります。近代日本黎明期の気風に触れられる、良い展覧会でした。

 展覧会を見終えて外に出ると、平安神宮に通じる大通りに、どういう訳か赤い絨毯が敷かれ、人だかりが出来ています。行ってみると、「岡崎レッドカーペット」なる催し。

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 平安神宮の前の自動車道に、この土日限定で赤い絨毯を引き、1時間毎に時代祭の維新官軍や吹奏楽隊がパレード。空き時間は一般に開放し、自由に歩いてもらう趣向です。

 我々が行った時は、ちょうど空き時間で一般公開中。絨毯の上には、なぜか1羽の白うさぎ。皆の人気者になっています。それにしても何ゆえ?赤い絨毯には白い毛に赤い目のツートンカラーが映えるから?

 赤絨毯通りの東側には、グルメゾーンが出来ていました。地鶏と松茸の親子丼を狙うも30分近い待ち時間に断念  祇園さゝ木の鱧天丼をチョイス。さくさくの柔らかな鱧に、ほんのり香ばしい松茸 いかにも京都らしい、逸品でした

 食べ終えて、哲学の道でも散策しようとすると、雨が降り出しました レッドカーペットの上では、ちょうど鳥羽高校の吹奏楽マーチングが始まりました。せっかくピッチもばっちりで上手な演奏なのに、楽器が濡れて、気の毒

 我々も哲学の道散策は断念して、白川に沿って、小降りだし傘を差したままとりあえず三条まで歩くことに。祇園の近くまで来たところで、Takaが「お酒を買いに行きたいよの」とのたまいます。聞くと、お目当てのお店は、二条城の南の三条商店街とのこと。結構な距離ではと、びびりながら歩き始めると、途中、文化博物館や老舗らしい道具屋やら色々出てきて、飽きません。京の町歩きの面白さです。

 烏丸のビジネス街を越えると、日常の生活空間。地元感たっぷりの三条商店街でお目当ての酒屋に寄り、今度は堀川通りを南下。本願寺に近づくと、辺りは仏具街。線香や法衣、数珠の修理専門店まであります。ここまで歩くと、京都駅はもうすぐ。1200年前、平安京が徒歩で歩ける距離に収まっていたことを考えると、意外にコンパクトな京都の中心部でした。

20120923_takahashi_04 夜は、Taka姉宅で宴会

20120923_takahashi_05 東北のお酒を飲みながら Taka姉夫妻の夏の終わりの東北旅行の話を伺いながら、我々も東北に行きたいな~と思わずにいられせん。

 旅愁に誘われる秋の初めの酔い、もとい宵でした。

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2012年3月 8日 (木)

梅香る大和文華館

20120308_yamatobunkakan_01 本日、齢才の誕生日を迎えたElli。Takaはあいにく遠隔地出張中につき、なんと同じ日に誕生日を迎える()友人の方と、誕生日を過ごすことにしました。

 あやめ池に新しく出来た自然派カフェ"Natura Natura"で、お誕生日ランチ。メインディッシュは、ニューカレドニア産「天使の海老」。頭から尻尾まで食べられて、ぷりぷりの柔らかな食感に、品の良いほのかな甘さ。9年前Takaと旅した時には、こんな美味しい海老があるとは、(食べてたのかもしれませんが)知りませんでした。デザートの盛り合わせもたっぷりで、お腹もいっぱい

 食事が済んで、大和文華館へ。東洋美術の美術館で、庭園には四季折々の花が咲きます。この時期は、梅。5日前、奈良でまだまだつぼみだった梅。果たして・・・ 咲いていました!

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 暖かい日が続いたため、一気に開花が進んだようです。紅梅、それも緋色を深くしたような紅から、枝垂れ梅の可憐なピンク、桜のような清楚な薄桃色、そして、気品のある白梅。

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 赤い梅から順に咲くようで、紅梅はほとんど満開。開花が進んで、黒くなっているものすらあります。ピンク色の梅は、見頃から咲き始めまで。白梅は、つぼみが多く、まだまだこれからも楽しめそうです。

 それにしても、八重から一重、濃いピンクに白い縁取りがあるものまで、様々な梅が集められています。緋色のような紅梅は、鹿児島紅梅というのだそうです。鮮やかな南国の空に、映えそう。

 館内の展示は、「花の美術」。梅、桜、蘭、牡丹、蘭、菊、秋草・・・中国、朝鮮、日本の花を描いた作品が集められています。陶器、掛け軸、蒔絵の茶道具、国宝「寝覚物語絵巻」も。桜と秋草を描いた作品は日本製作かそうでなければ日本向けで、やはり日本独自の感性のよう。

 梅は、写真には難しい花木ですが、水墨画で描くと、ぴんと延びた枝が、筆を引いたり留めたりする描法に、よく合います。中国で、竹や蘭が画題として好まれたのも、同じような事情なのでしょう。水墨画では、あんなに美しく枝振りが表現されていた梅。それが、展示を見終え庭に出て、いざ梅を枝振りまで写真で撮ろうと構えると、枝がごっちゃに重なって、訳の分からない画像になってしまいます。(単にElliが下手なだけとも)思いのままに描ける絵の自由さ、改めて素晴らしく思いました。

 梅がようやく春の訪れを告げているのが嬉しい、花の庭の午後でした。

 

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2011年8月 7日 (日)

フェルメール再び 豊田市美術館へ

 うーん。 夏本番のはずなのに天気がすっきりとしません。 天気予報でも相変わらず

曇り時々晴れ、所により、にわか雨か雷雨、突風が吹くところもあるでしょう。

                ・・・

どう転んでも絶対にはずれないパーフェクトな予報です。 しかし、パーフェクトであるが故に行動を起こせない我々がそこにいました。 天気予報は本当に要るのだろうか? と真剣に考えてしまいます。 

 短い夏休みなので、伊吹山にでも登りお花畑を楽しもうか、あわよくば木曽駒ヶ岳にでも涼みにいこうか、と考えていましたが、狭いところと、人混みと、山の上の霧が最も嫌いな Taka としては、このような天気予報の下ではテンションが上がるはずもないというもの。「もう、寝正月ならぬ、寝夏休みでいいじゃん。」と思っていたところに、それはならじとElliが一枚のパンフレットを。 

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 そうです。8月4日に京都市美術館にフェルメールを観に行った際に Get してきたパンフレットには、「フェルメール、来たる」と銘打ってあります。

 Taka: 何、これ?

 Elli : 知らんかった? 愛知にもフェルメールが来てるよ。

 なんとも魅惑的なパンフレットでしょうか。京都のフェルメールも良かったですが、豊田市美術館で開催されているこの展覧会のパンフレットに描かれている一人の男性。Taka的には、強く引きつけられるものがありました。しかも会期は8月26日まで。 もう、これに行くしかありません。しかも、同じ愛知の名古屋市美術館ではレンブラントも来ているようです。 ということで、この夏休みは、

         芸術の夏。 フェルメールの夏。 オランダの夏。

とすることにしました。

 なんでも前日に美術館に電話をいれたところ、お昼を過ぎると270台分の駐車場が満車となる可能性があること。 これは朝一番に行くべしと、6時にお家をでて一路豊田へ。そして、顕れたるが目的の豊田市美術館です。

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 やっぱり流石ね。と思わせてくれる立派な美術館です。開館30分前でしたが既にチケットを購入するために並んでおられる方もいます。

 お目当てのフェルメール「地理学者」 素晴らしい絵でした。現存しているフェルメールの36枚の絵の中でたった2枚の男性を描いた絵の1枚。 これまで観てきた女性の絵にも感動を覚えましたが、この絵に潜んでいる精神性には圧倒されました。学者の視線の先にあるものを想像するだけで自らも遙かなる思いにふけることができます。それにフェルメール独特の構図と光の設計。“設計”などと言うと怒られてしまうかも知れませんが、フェルメールの絵には深遠な設計があるように思えてなりません。捨てられたように無造作に置かれている物ですら構図に安定感や安心感を与えてくれる・・・ Takaも技術者の端くれとしてこのような設計センスを身につけたいものです。

 たっぷりと絵画を楽しんだ後は、併設されているレストランでフェルメール展特別ランチ「舌平目のグリル キャベツとりんごのオランダ風ロデコール添え」をいただきました。とても美味しくお得な料理でした。ちょうどお昼時でしたので、美術館は並ぶことなく(実際には開館されるまで、30分待ちましたが)入れましたが、こちらは大盛況で座席に座れるまで30分待ちでした。

20110807_vermeer_03 豊田市美術館を後にして向かったのが「レンブラント 光の探求/闇の誘惑」展が開催されている名古屋市美術館です。

20110807_vermeer_04 レンブラントといえば、これまで主に油絵しか観たことがなかったのですが、この展覧会では、数多くの版画が展示されていました。

 確かにモノクロームの世界である版画。まさに、光の探求、闇の誘惑の世界です。インクの濃淡だけで、ここまでの表現ができるのかと、これまで抱いていた版画への認識が大きく変えられました。

 レンブラントは、資産家の娘サスキアを妻に娶り、自らが描いた絵画や版画が高額で売れていたにも関わらず50歳で破産したそうです。 何でも、絵の題材となる品物を世界中から収集したことがその原因だそうです。物事を極めようとした者の執念みたいなものを感じました。

 最初、一日でビッグな展覧会2つは体力的に厳しいかなとも思っていましたが、素晴らしい絵画は、全く疲れを感じさせず、清々しい気分だけを残してくれました。

 名古屋市美術館に閉館まで楽しんだ後、「あつた蓬莱軒」というお店で名古屋名物「ひつまぶし」を食べました。お店の前には長蛇の列ができており、ここも座席につけるまで40分程度は待ちましたが、香ばしい香りが素晴らしい待った甲斐のある味でした。

 最初の計画とは違った夏休み・・・ 嬉しい誤算の夏休みとなりました。

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